横田増生さんがアマゾンの出荷工場に潜入ルポをして書き上げた『アマゾン・ドット・コムの光と影』を読みました。Amazon.co.jpの“光の部分”というのは、顧客満足度(CS)と顧客ロイヤリティ(継続的に利用したいとする忠誠心・信頼感)を最大限に考慮して作成された『Amazon.co.jpのECサイトとウェブショッピング環境』です。僕自身、アマゾン(Amazon.co.jp)に限らず楽天などでも時折買い物をしますが、やはり、サイトのユーザビリティや検索のしやすさを考えると、アマゾンのウェブショッピング環境の素晴らしさは断トツです。
楽天が、種々雑多なお店が集積している巨大なショッピングモールのサイトだとすれば、アマゾンは、アマゾンという1つの巨大店舗が本やDVDをはじめとしてありとあらゆる商品を集めたサイトだということが出来ます。広大な商店街である楽天の場合、何万店舗というバラバラのお店が入っているので、商品のアイテム数がアマゾンよりも多く、日本全国のお店が参加しているというメリットがあります。特に、お中元やお歳暮で贈るような地方の名産品や生鮮品の分野では、アマゾンは全く太刀打ちできません。
しかし、その一方で、日本全国の無数のお店のサイトが集まっている楽天のサイトは、デザインやユーザビリティ、商品画像に統一感がなくサイトとしての一貫性がないというデメリットがあります。アマゾンの場合は、本を探していても、DVDやエレクトロニクス(電化製品)を探していても、『いつも同一のデザインのサイトの中にいる』という安心感や信頼感があるわけです。特に、本やDVDを一度でもアマゾンで買ってしまうと、アマゾン以外のECコマースで本・DVDを買おうとする気持ちが殆どなくなります。
アマゾンは書籍とDVDに関する限り、品揃えでも検索の精度でもマーケティング手法でも、間違いなく日本ナンバー1のECサイトであり、実店舗を構える書店の最大手である紀伊国屋書店よりも大きな売上高を上げているといわれています。書籍だけで年間1,000億円以上は確実に売り上げられていると見られていて、日本の出版業界全体の売上げの約10%以上のシェアを誇っているわけですから、正に海外から押し寄せた圧倒的な売上げ能力を持つ黒船だったわけです。
アマゾンの“光の部分”を一つ一つ上げていけばキリがありませんが、一言でいうならば、徹底的に『顧客の利便性と満足度(Customer Satisfaction)』を追求し続けていることに尽きると思います。書籍を売っている他のECサイトと比較して優れている点としては、『1,500円以上買えば、送料が無料』『書籍・DVD・エレクトロニクスの品揃えが良い』『過去の購入履歴から、商品をリコメンド(推薦)してくれること』『サイトのデザインに一貫性があり、検索しやすいこと』『他の購入者のレビュー(感想と評価)を参考にできること』『支払方法の選択肢が多いこと』などを上げられます。
特に、仕事や研究で各学問分野の専門書や技術書を購入したい人の場合、アマゾンで検索して探すのは相当に効率的で、絶版になっている本でもアマゾンの古本屋(マーケット・プレイス)で見つかることが少なくありません。自分が『最近チェックした商品』と『最近購入した商品』から興味を持ちそうな商品をリコメンド(推薦)してくれる機能というのは、かなり便利であり実際、普通の書店にいるアルバイトの人よりも的確に本を選んで薦めてくれます。
『アマゾン・ドット・コムの光と影』の横田増生さんも、一般の書店で店員に本の有無を聞くと露骨に面倒くさそうな対応をされて不快な気分になった経験を上げていますが、結構、リアルの書店で専門書などについて質問をするのは気が引ける部分があります。
アマゾンであれば検索キーワードさえ分かっていれば即座にその本の在庫があるのかないのかをチェックでき、待たされることもなければ店員の対応によってストレスを感じることもないわけです。まぁ、リアルのコミュニケーションにも面白さがあるのですが、本に関しては相手がその書籍について何も知らない場合にいちいいち細かく説明するのは大変です。時間がかかるばかりで、結局、何十分も待たされて『その本の在庫はありません。入荷予定も未定ですが一応予約しますか?』とのらりくらりとした接客をされることもあります。
普通、本を買うときには1,500円以上は使うことが多いので、アマゾンで買えば日本の何処でも送料無料で配送してもらえます。関東以外の地域だと、3日ほど配送に時間がかかりますが、概ね予定されている配達日には届けて貰えるのでそれほどストレスにはなりません。1つ欠点があるとしたら、配達日時を指定できないことで、夕方・夜に配達して貰いたいときに早朝に着ていて受け取れないことがあったりするということでしょうか。
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テーマ : 経済
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