インターネットで無料の情報・ニュースを読む層が拡大する21世紀を新聞社はどう生き残っていくのか?
新聞社の『特殊指定』と『再販制度』の特別待遇は、消費者利益と『知る権利』の保護に役立つか?
新聞社の特殊指定の存廃に関する話の続きをもう少ししてみようと思う。多くの情報産業が低コスト化を迫られ、低価格戦略をとらざるを得ない状況において、既得権益を保障された新聞社と販売店だけが、自由競争の淘汰の影響を殆どうけないというのは自由市場経済における公正性に問題が生じる。
ただ、インターネットが全ての国民に普及したわけでも、高齢者や情報弱者の間に厳然としてあるデジタル・デバイド(情報格差)がなくなったわけでもないので、拙速に特殊指定を廃止すれば良いというわけではないという意見にも一理ある。
後、弱小資本である地方紙が、自由競争状態に置かれると殆ど倒産してしまう恐れがあり、多種多様な新聞言論の確保ということに価値を認めるのであれば、一定の価格規制としての特殊指定は必要である部分もある。IT時代において新聞メディアにどれくらい高い価値を認めるのかには、非常に大きな個人差があるので、特殊指定の存廃を一義的に論じることが難しい背景がある。
情報収集の大部分をインターネットで済ませる人にとっては、毎日戸別配達される新聞はそれほど必要不可欠なものではないだろうし、いずれ若い世代が高齢化する時代になれば新聞購入者のパイは相当に小さくなると予測されるので、どちらにしても新聞社の事業規模は50年くらいのスパンで見れば大きく縮小する恐れがある。
もしくは、現在、無料公開しているネット上の新聞記事の一部(社説など)を有料配信する方法もあるが、その方法でも現在の戸別配達のような大きな営業利益を上げることは極めて難しくなるだろう。
資本家・政治家・公務員・従業員(サラリーマン)まで各種の階層を含む膨大な数の大衆層に『同一内容のメッセージ(記事内容・政治評論・経済情報・社会問題の提起)』を伝達するマスコミュニケーションが出来るのがマスメディアである。新聞記者やアナウンサー、論説委員など少数の選ばれた発信者が、圧倒的多数の受信者(大衆層)に同一内容を伝えることが出来るのが最大の特徴である。