ピロリ菌に気管支喘息の予防効果!筑波大の研究グループが発表!
ピロリ菌に気管支喘息の予防効果!筑波大の研究グループが発表!
乳児期の赤ちゃんに対して、ピロリ菌から抽出したコレステロールの一種を与えると、アレルギー性の気管支ぜんそくや花粉症、食物アレルギーなどの予防に効果があるということを、筑波大大学院数理物質科学研究科の島村道夫研究員らの研究グループが、13日付の米国医学誌ジャーナルオブクリニカルインベスティゲーション電子版で発表したということです。
『ヘリコバクターピロリ菌』というと、胃や十二指腸に感染して胃潰瘍・十二指腸潰瘍など消化器疾患の原因になる細菌として知られていますが、感染経路は井戸水や食品からということだけで詳しい感染の経路は分かっていなかったりもします。消化器疾患や胃がんなどの原因にもなるとされるヘリコバクターピロリ菌が、乳幼児に発症して慢性化しやすい『気管支喘息』を予防する効果があるというのは画期的な発見ですね。
乳幼児のアレルギー性疾患とされる『気管支喘息』は、自動車の排ガス・タバコの煙の化学物質、スギの花粉、ハウスダストなどをアレルゲンとしていますが、患者数が非常に多い慢性疾患としても知られています。気管支喘息の患者は、日本で約300万人、世界で約3億人と推定されていますが、喘息を根治させる治療法は今のところ存在せず、治る場合でも器官の成長や免疫力強化に伴う自然治癒に頼るしかないのが現状です。
副腎皮質ホルモン剤のステロイドや気管支拡張剤の投与によって、ぜんそくの炎症や呼吸困難を和らげるという『対症療法』が現在の医療の中心となっていますが、近い将来に、ピロリ菌のコレステロールから作った薬剤が気管支喘息の治癒に役立つことに期待したいところです。研究グループは、幼少期に感染症の原因となる細菌やウイルスにさらされる機会が少ないと、成長した後にアレルギー性疾患にかかりやすいという『衛生仮説』から、ピロリ菌のコレステロールを発達初期のマウスの体内に投与すれば、アレルギーを抑制する免疫能が作られるのではないかと考えたそうです。
マウス実験では、新生マウスにピロリ菌が産生するコレステロール『コレステリルアシルグルコシド(ChAcG)』を投与して、そのマウスの成長後に喘息を起こす物質に触れさせるという実験を行っています。気道の炎症を観察すると、ChAcGを投与しなかったマウスだけが喘息が発症して重症化しやすく、投与されたほうのマウスは炎症の原因となる白血球の値が低くなっており、喘息を発症しないか重症化しなかったということです。
島村研究員は、このピロリ菌の産生するコレステロールについて、ChAcGの投与をすると免疫細胞『NKT細胞』が活性化することで、アレルギー性疾患を発症しにくくなると解説しています。幼少期にウイルス・菌に触れることで免疫細胞が正常に発達し、成長後にアレルギー性疾患を抑制する免疫系が形成されるという『衛生仮説』の実証にもなりそうです。島村研究員は『大人になると免疫系が固まって改善が見込まれないが、幼少期での投与は効果的。近い将来、実用的な予防薬を作ることが可能だ』と話しており、ピロリ菌に由来するコレステロールからいつか『小児向けのアレルギー予防薬』が開発されるのかもしれません。
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