アメリカの病院が、ヒト万能細胞から『腸管に近い組織』を作成することに成功!
アメリカの病院が、ヒト万能細胞から『腸管に近い組織』を作成することに成功!
あらゆる組織・器官に分化発達する可能性を持っているのが、一般に万能細胞と呼ばれるES細胞(胚性幹細胞)とiPS細胞(人工多能性幹細胞)ですが、アメリカのシンシナティ子供病院医療センター(オハイオ州)の研究チームがiPS細胞の万能細胞を試験管内で培養して、腸管に近い立体的組織を作ることに成功したようです。
14日に、英科学誌ネイチャー電子版で発表されたそうですが、万能細胞を動物の体内に移植して培養するのではなく、試験管内で人工的に培養して、ここまでしっかりとした器官(腸)の組織にまで分化させたのは初めてということです。今までは、ES細胞を動物に移植する形で、肝臓や膵臓などのシート状組織を作成できたことはありますが、シート状の薄いものではなく腸管の立体的組織を作成できたということ、しかもそれが試験管内だけで行われたことは、かなり画期的な実験の成果と言えそうです。
この実験成果を応用した再生医療で期待されているのは、潰瘍性大腸炎の治療や乳児に起こる壊死性腸炎など難病のメカニズム解明ですが、将来的には腸管が病気で損傷して回復困難な症例に対し、『万能細胞から作った腸管』を使って移植医療が行えるようになるのかもしれません。また腸管の立体的組織を作成できるので、飲み薬の『腸での吸収効率』を高める技術開発にも応用できるということで、薬剤開発の分野でもヒト万能細胞の研究が役立つ場面は多そうですね。
病気・事故などで『失われた器官・機能しなくなった器官』を自分の万能細胞を用いて再生できるという『再生医療の可能性』については、十年以上前から言われているのですが、やはり実際の人間の器官を再生して医療するという高度な技術の実用化は極めてハードルが高いですね。近未来では保険適応の再生医療なども登場してくるのかもしれませんが、少しでも早く実際の臨床にも応用できるような再生医療の技術基盤が確立することに期待したいです。再生医療で救われる患者の数は極めて多く、今では難病の特定疾患(治療法のない病気)として諦める他ないような病気でも改善や治癒の可能性が見えてくるかもしれません。
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