福島第1原発事故の損害賠償はどうなる?『国・東電・国民(税)』の負担配分は不透明、東電は免責規定を主張。
福島第1原発事故の損害賠償はどうなる?『国・東電・国民(税)』の負担配分は不透明、東電は免責規定を主張。
福島県の福島第1原発事故(INES尺度のレベル7)で、メルトダウン・水素爆発などが発生して放射性物質が漏れて、近隣住民が計画的避難をさせられているが、事故が安全に収束する見通しがなかなか立たない。東電は原子炉を安定冷却して放射性物質がでなくなる対処をするまでに6~9ヶ月間かかるという『工程表』を出しているが、福島原発事故による『産業活動(農業畜産)・居住地・土地・海洋の被害(汚染)』は深刻であり、潜在的な発ガン性向上や精神的ダメージなどの健康被害も含めると、その損害規模と損害賠償は数兆円を超えるとも試算されている。
原発事故の損害賠償は一民間企業で支払うことは不可能とも言われ、最終的な賠償の決着をつけるためには政府による国庫負担(税金投入)も必要になる恐れが高い。事故の加害者として管理責任を問われる東電は、『賠償金の上限を決めてほしい(そうしないと社債発行や借入ができず経営破たんする)・原子力損害賠償法における異常に巨大な天災地変という免責規定が当てはまる可能性がある』といった主張を行っており、現状では東電が積極的かつ全面的に賠償を果たす姿勢を見せているわけでもない。
東電は当面の責任履行として、『原発事故による避難者に対して1世帯100万円の仮払い』と『東電社員の減給・役員報酬の半減』などを打ち出しているが、どちらの賠償や経費節減に対しても『当面の賠償・責任としてもお粗末過ぎる』という世論の非難・反発は根強くある。東電の管理下にある福島第1原発事故が引き起こした『近隣住民への損害や不安』『日本経済の風評被害』『国際社会の反発や懸念』はきわめて甚大であり、東電はその責任を説明と事故処理、損害賠償で多面的に果たしていかなければならないが、東電の企業体力では自ずから限界があり、将来的には政府の管理化に入る可能性もあるという。
文化的・文明的な生活に電気は必要不可欠であるため、東電の組織構造や経営主体、電力事業の方法を改変するような『国有化・政府管理』が暫時的に行われるとしても、東電の事業そのものを廃業したり組織そのものを消滅させたりすることはできない。菅首相は原発事故の責任は原発推進政策を行ってきた政府(国)にもあるとして、2011年度第1次補正予算案の質疑で『損害賠償は最後の最後まで国が面倒を見る』と発言したが、そうなると最終的に原発事故の尻拭いをするのは国民でありその財源は税金であるという話になってくるのだろう。
菅直人首相は『一義的には東電に責任があるが、原発を推進する立場で取り組んできた国の責任は免れない』と語り、東電の清水正孝社長が『大震災に伴う巨大な津波が免責理由に該当する可能性がある』との認識に対しては『免責となると東電に賠償責任は無く、国が全ての賠償責任を負う。それは少し違うのではないか』と反論している。原賠法の3条1項とは以下のような条文で、電力会社の免責規定を定めたものである。
『原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない』(3条1項)
今後、原発事故の東電の損害賠償問題を巡っては、原子力損害賠償法第3条第1項『異常に巨大な天災地変による原子力損害については原子力事業者を免責する』との規定の解釈による訴訟が続く恐れもあり、東日本大震災が異常に巨大な天災地変に当たるかの法律論議の問題もでてくるのかもしれない(当然、東電が訴訟戦略を取れば国民世論のバッシングと攻撃は否応なしに高まるとは推測されるが)
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テーマ : ほっとけない原発震災
ジャンル : 政治・経済