村上ファンドが、「日本の税制・規制」を嫌ってアジアの金融拠点を目指すシンガポールに投資資産と活動拠点を移転。
日本では、法人税率や所得税率を増税するという税制改革案はあまり出てきませんが、その背景には、法人や金融に高い税率を掛けると、企業活動や金融事業に対して安い税制を敷く海外に資金や人材が流出するリスクがあるという事情があります。先進国の事業・資金・人材を誘致する為に税制や規制の優遇政策を取っている国が結構あるので、日本だけが税率や規制を強くすると、それを嫌って優良企業や利ざやの大きい金融事業が海外流出してしまうかもしれないという事です。
過去記事で、村上ファンドが阪神電鉄の経営権取得に関わる株主提案をしたというニュースをお伝えしましたが、その村上世彰氏率いる村上ファンドが活動拠点と運用資産を海外のシンガポールに移転したそうです。
阪急ホールディングスとの間で阪神電鉄株の売却に関する交渉が続いていて、村上ファンドも大きな売却益を上げるのは難しい状況のようですが、マスコミや投資関係者の注目が集まっている中での突然の『資産・拠点の移転』ですから話題だけでなく色々な臆測を呼びそうですね。
ファンド側の説明では、何故、シンガポールに活動拠点と運用資産を移すのかの理由について、『日本と比較して税制面で優遇されていて、法律による投資や金融への規制が少ないからだ』と言っていますが、実際には、ライブドア・ショック以降ファンドのマネーゲームに敏感になってきた金融庁や監督官庁・取締委員会の監視監督(や将来の法規制)を嫌ったのではないかとの見方もあります。
村上ファンド、海外に全資産を移転元通産官僚の村上世彰(よしあき)氏が率いる投資ファンド(村上ファンド)は10日、すべての運用資産と活動の拠点をシンガポールに移したと発表した。理由として日本に比べ、規制や税制の面で有利なことをあげている。外国を拠点にしても日本で投資を募る限り、日本の規制の対象になるが、海外では金融当局の実際の監督や規制は難しい。今回の移転は、活動の実態を当局が把握しにくくする狙いもあると見られる。
村上ファンドは現在、「M&Aコンサルティング」が投資戦略を練り、実際の運用は投資顧問会社「MACアセットマネジメント」が行っている。今の法律では、投資家を自ら募るファンドは、当局の規制の対象にならない。国会で審議中の金融商品取引法案が成立すれば、投資ファンドの設定者や運営会社にも、登録や届け出義務が生じるなど規制の対象が広がる。M&Aコンサルティングも規制対象になる可能性がある。
小泉政権下では、金融ビッグバンという潮流の中で、大幅な金融事業と証券取引(株式売買・債権取引)の規制緩和が推し進められましたが、このまま金融市場と投資事業の規制緩和が日本で拡大し続けるのかという明確な保証がないというのも海外移転の理由の一つかもしれません。
特に、マスコミに頻繁に取り上げられ続けられている村上ファンドに対して、金融庁や検察当局などが関心を示している可能性は否定できず、重箱の隅をつつくような調査や検査があると投資活動が停滞する恐れもあります。
金融ビジネスや投資ファンドの活動を積極的に大胆に推し進めようとすると、コンプライアンス(法令遵守)を心がけていても、どうしても前例のない合法性に対して解釈の余地が出てくる活動があると思いますから、正に「想定の範囲外」の国や検察・官庁の動きを事前にヘッジする必要があるわけです。
とはいえ、村上ファンドの移転には、村上世彰の経営ポリシーや投資理念が日本の経済風土や伝統文化に受け入れられない為、村上氏自身が投資を加速させる海外の新天地を目指して日本を飛び出したという見方もあるようですね。本人も、今後はインドやアジア関連の投資を増やしていきたい以降があるようです。少し前に流行していた中国の株式市場への投資の旨みや将来性が、アメリカとの政治的要因で危ぶまれている中、インドや東南アジアにビジネスチャンスを見出す村上ファンドの投資ビジョンには先見性があるのかもしれません。
こういったファンドや企業の海外移転や投資活動の加速などのニュースを見るにつけて思うのは、自由市場の勝者は増税や規制を徹底的に嫌う性向があるんだな、どこまでもシビアに利益率の向上を追及しないと生存を図れないんだなということです。その意味では、平凡なサラリーマンでも安定した給与が保障されている身分のほうが気楽だなと思わないでもないですが、村上氏や堀江氏のような常人離れした行動力や決断力が羨ましく感じることがあります。ハイリスク・ハイリターンを当たり前のように日々のビジネス活動に取り込んでいくというのは、生半可な精神力やビジネスセンスでは出来ることではないですけどね…。
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