新聞社の『特殊指定』と『再販制度』の特別待遇は、消費者利益と『知る権利』の保護に役立つか?独占禁止法の基本理念と対立する新聞事業の寡占問題!
公正取引委員会で、『新聞の特殊指定』が独占禁止法に違反するのではないのかという議題が立ち上がっていたが、強い政治的影響力を持つ新聞社と広範なネットワークを持つ販売点へ配慮したのか、『新聞の特殊指定』の廃止や改訂などは行わないという事になったようだ。6月2日午前に開かれた自民党の独禁法調査会で、新聞社や新聞販売店による異なる定価設定や値引き行為を禁ずる『新聞の特殊指定』廃止は当面見合わせるという方針を正式に表明した。
新聞社というのは近代社会の『マスメディアの起点としての位置づけ』を持っていて、多くの新聞社がテレビやラジオ、雑誌といったマスメディア機関を子会社として所有している。私たちがマスメディアという言葉からイメージする大量情報伝達媒体とは、一般的に、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌を指す。
新聞社同士のシェア獲得競争や値引き合戦を阻害する『新聞の特殊指定』は、大きな批判がある一方で、『日本全国を隈なく回る戸別配達(宅配制度)』を守るために必要だと言われてきた。もちろん、独占禁止法の基本精神を述べた『独占禁止法 第一章総則 第一条』に照らし合わせると、新聞各社の特殊指定は明らかに独占禁止法違反である。
新聞社や販売店の主張をまとめると、『「社会の公器」としての重要な責務を持つ新聞は、他の手段で代替可能な商品やサービスと同列に独占状態の禁止を論じられる商品ではない。日本国民全員に、新聞を同一価格で配達可能な販売体制を維持する必要があり、日本国民の「知る権利」を擁護する為に「特殊指定と再販制度」を堅持しなければならない』というものである。
しかし、この主張には幾つかの矛盾や誘導があるようにも思える。以下に特殊指定と販売制度に関する新聞社の主張の矛盾や問題を幾つか上げてみる。
『大量情報伝達媒体としての新聞社やテレビ局だけを、他分野の事業活動から切り離して特別に保護政策を取り、永遠に経営危機から守られているという寡占状態の問題と新聞事業への新規参入の締め出しの是非は問われて然るべきである。』
『自由な価格競争をしたら、本当に新聞事業の大半が立ち行かなくなって、国民の「知る権利」が侵害されてしまうのだろうか?消費者としての国民の選ぶ権利が行使されても、本当にお金を出して読む価値のある記事を公開していれば、少しくらい価格が高くても賢明な読者はその新聞を選んで購入するのではないか。』
『高コストの島嶼部や遠隔地への戸別配達事業は、競争が自由化すると確かに継続困難になる可能性はあるが、その場合には、パソコンなど情報端末を貸し出してネットで有料配信を積極的に行うという事業転換などが起こってくるのではないか?しかし、配達に高いコストが掛かる地域への戸別配達の維持が、特殊指定と再販制度の正当性の一つの根拠であることは確かだが…その代替手段が現代社会にないわけでないこともまた確かである。』
独占禁止法第一条には、以下のような記述がなされており、新聞社の特殊指定と再販制度は、『公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする』という独占禁止法の基本理念を大きく逸脱し、複数の選択肢からより望ましいものを選択できるという消費者利益を著しく損ねるものであると言える。
ちなみに、『再販制度』というのは、『特殊指定』と一緒になって新聞事業の寡占化を実現している制度であり、新聞社が販売店に小売価格を直接指定して自由な価格設定を出来ないようにする制度のことである。
第一条 この法律は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し、事業支配力の過度の集中を防止して、結合、協定等の方法による生産、販売、価格、技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより、公正且つ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇傭及び国民実所得の水準を高め、以て、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。
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