ネットビジネスを象徴する『塵も積もれば山となる』のロングテール理論は、今後のウェブでも通用するのか?The Wall Street Journal紙からのデータに基づく反論!
■WEB2.0のビジネスを象徴する“ロングテール”理論に異議あり!
アメリカのWired Magazine誌で編集長を務めるクリス・アンダーソン(Chris Anderson)が提唱して、インタービジネスの本質を表す概念として急速した概念が『ロングテール』ですが、The Wall Street Journal紙のコラムニストからこのロングテールが、実際のネットビジネスの売上を反映していないという反論が起きているようです。
ネットの革命「ロングテール」に異議 論争白熱「Web 2.0」は、IT業界のみならずビジネス界全体の流行語となっている。そのなかでも関心を集めているキーワードが「ロングテール」(Long Tail)だ。このロングテールをはやらせた米Wired Magazine誌の編集長、Chris Anderson氏は7月、米国で著書『The Long Tail』を出版。勢いを加速した。だが、あっという間にベストセラーとなったこの『The Long Tail』に対して、米The Wall Street Journal紙のコラムニストが「誇大だ」と反論している。
(中略)
すなわち、Anderson氏は当初、「半分以上の売り上げが上位13万位以外から」と書いていたが、本になった段階で「売り上げの25%が上位10万位以外から」に修正されているというものだ。そして、ロングテール効果を測定する上で本当に有益なのは、「インターネット時代になる前、典型的な本屋では上位10万位が売り上げの何%を占めていたのかと比較すること」を提案している。
Amazon.comのビジネスモデルを端的に示すといわれるロングテールというのは、従来のビジネスの常識であった『パレートの法則(2:8の法則・80対20の法則=20%の売れ筋商品が全体の売上の80%を占める)』を打ち破るものです。在庫管理コストが安く商品の展示スペースに制限がないウェブビジネスでは、従来、展示スペースの狭さから置くことが出来なかった『人気のない死に筋商品』を無数に取り揃えることができ『塵も積もれば山となる』のビジネスモデルを確立することが出来ます。
商品を売上数の順番で並べた棒グラフを書くと、『少数の売れ筋商品(ベストセラー)』が恐竜の頭のように持ち上がり、『膨大多数の人気の乏しい商品(マイナー商品やマニア向け商品)』が恐竜の尾のように延々と何処までも続くことになります。この何処までも続く死に筋の人気の乏しい商品の長い長い尾のことをロングテールといい、Amazonのようなウェブビジネスはロングテールで稼ぐのだといわれてきました。
しかし、The Wall Street Journal紙のLee Gomesは、音楽のストリーミング販売を行っているeCastの販売データを調査して、現在では四半期中1回もアクセスされなかった曲の比率が、2%から12%に増えていてロングテールの理論が通用しにくくなっていると指摘しました。更にeコマースの書籍販売の最大手アマゾンでも、『2.7%の商品が売り上げの75%をもたらしている』(Amazonは35万タイトルを取り扱う)といったロングテールに対する反論を行っています。クリス・アンダーセンは、それに対して更に、『Amazonのデータについては、在庫が無制限である世界で、しっぽと頭を%で定義することは無意味である』という反論を行っており、ロングテールがこれからのウェブビジネスにおいても通用するのかどうかの議論が白熱しています。
僕の感想としては、インターネットの利用者数が増大したことで、ウェブショッピングの体験が日常化し消費者の需要もリアルに少しずつ近づいているのではないかと感じています。つまり、数年前にアマゾンなどを利用してネットで買い物をしていた層には、ギーク(コンピューターおたく)やアニメやゲームなどのマニアの人たちが多かったために、ロングテール現象が目立ちやすくなっていたのではないかということです。
ここ2~3年ほどで、一般の学生や中高年のサラリーマン、家庭の主婦、小学生の年代の子どもがインターネットを利用する頻度が急速に増えている印象があって、ネットの世界も現実世界に近づいていますよね。ネットがリアルに近づいた結果、アマゾンでウェブショッピングを楽しむ層も厚くなっていると考えられますが、そうなるとウェブショップの売上構成は必然的に、リアルの書店やDVDショップの売上内容に近づいていきます。そういったウェブの日用品化(コモディティ化)の経緯があって、ベストセラーの『売れ筋商品』がたくさん売れる傾向が顕著となっていき、マニアックなロングテールの死に筋商品が売れにくくなっていくのではないかと思います。
■熊本ファミリー銀行が大幅赤字。紀陽銀行は公的資金注入を要請。
大手都市銀行の不良債権処理がほぼ終結し、史上最高の営業利益を出していたので銀行業界の景気は概ね良いのかと思っていたのですが、地方銀行の中には経営状態が非常に悪くなっているところも幾つかあるようです。熊本県の地銀である熊本ファミリー銀行は、不良債権処理が思惑通りに進まずに435億円もの赤字を出して、福岡銀行から350億円の追加出資を受けるそうです。和歌山県の紀陽銀行も、和歌山銀行と06年10月10日に合併するそうなのですが、経営基盤が弱っているようで金融機能強化法の適用を申請して、200億円超の公的資金注入を要請するということですね。地方銀行の経営体力はまだまだ十分に回復しておらず、今後も収益改善や投資利益を上げられなければ経営が困難になる恐れもあると思います。
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