--.--.----:--

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2006.11.0717:52

『アマゾン・ドット・コムの光と影』 横田増生を読んでの感想:“消費者の浴びる光と労働者を覆う影”から生まれる希望格差と将来不安。

横田増生さんがアマゾンの出荷工場に潜入ルポをして書き上げた『アマゾン・ドット・コムの光と影』を読みました。Amazon.co.jpの“光の部分”というのは、顧客満足度(CS)と顧客ロイヤリティ(継続的に利用したいとする忠誠心・信頼感)を最大限に考慮して作成された『Amazon.co.jpのECサイトとウェブショッピング環境』です。僕自身、アマゾン(Amazon.co.jp)に限らず楽天などでも時折買い物をしますが、やはり、サイトのユーザビリティや検索のしやすさを考えると、アマゾンのウェブショッピング環境の素晴らしさは断トツです。

楽天が、種々雑多なお店が集積している巨大なショッピングモールのサイトだとすれば、アマゾンは、アマゾンという1つの巨大店舗が本やDVDをはじめとしてありとあらゆる商品を集めたサイトだということが出来ます。広大な商店街である楽天の場合、何万店舗というバラバラのお店が入っているので、商品のアイテム数がアマゾンよりも多く、日本全国のお店が参加しているというメリットがあります。特に、お中元やお歳暮で贈るような地方の名産品や生鮮品の分野では、アマゾンは全く太刀打ちできません。

しかし、その一方で、日本全国の無数のお店のサイトが集まっている楽天のサイトは、デザインやユーザビリティ、商品画像に統一感がなくサイトとしての一貫性がないというデメリットがあります。アマゾンの場合は、本を探していても、DVDやエレクトロニクス(電化製品)を探していても、『いつも同一のデザインのサイトの中にいる』という安心感や信頼感があるわけです。特に、本やDVDを一度でもアマゾンで買ってしまうと、アマゾン以外のECコマースで本・DVDを買おうとする気持ちが殆どなくなります。

アマゾンは書籍とDVDに関する限り、品揃えでも検索の精度でもマーケティング手法でも、間違いなく日本ナンバー1のECサイトであり、実店舗を構える書店の最大手である紀伊国屋書店よりも大きな売上高を上げているといわれています。書籍だけで年間1,000億円以上は確実に売り上げられていると見られていて、日本の出版業界全体の売上げの約10%以上のシェアを誇っているわけですから、正に海外から押し寄せた圧倒的な売上げ能力を持つ黒船だったわけです。

アマゾンの“光の部分”を一つ一つ上げていけばキリがありませんが、一言でいうならば、徹底的に『顧客の利便性と満足度(Customer Satisfaction)』を追求し続けていることに尽きると思います。書籍を売っている他のECサイトと比較して優れている点としては、『1,500円以上買えば、送料が無料』『書籍・DVD・エレクトロニクスの品揃えが良い』『過去の購入履歴から、商品をリコメンド(推薦)してくれること』『サイトのデザインに一貫性があり、検索しやすいこと』『他の購入者のレビュー(感想と評価)を参考にできること』『支払方法の選択肢が多いこと』などを上げられます。

特に、仕事や研究で各学問分野の専門書や技術書を購入したい人の場合、アマゾンで検索して探すのは相当に効率的で、絶版になっている本でもアマゾンの古本屋(マーケット・プレイス)で見つかることが少なくありません。自分が『最近チェックした商品』と『最近購入した商品』から興味を持ちそうな商品をリコメンド(推薦)してくれる機能というのは、かなり便利であり実際、普通の書店にいるアルバイトの人よりも的確に本を選んで薦めてくれます。

『アマゾン・ドット・コムの光と影』の横田増生さんも、一般の書店で店員に本の有無を聞くと露骨に面倒くさそうな対応をされて不快な気分になった経験を上げていますが、結構、リアルの書店で専門書などについて質問をするのは気が引ける部分があります。

アマゾンであれば検索キーワードさえ分かっていれば即座にその本の在庫があるのかないのかをチェックでき、待たされることもなければ店員の対応によってストレスを感じることもないわけです。まぁ、リアルのコミュニケーションにも面白さがあるのですが、本に関しては相手がその書籍について何も知らない場合にいちいいち細かく説明するのは大変です。時間がかかるばかりで、結局、何十分も待たされて『その本の在庫はありません。入荷予定も未定ですが一応予約しますか?』とのらりくらりとした接客をされることもあります。

普通、本を買うときには1,500円以上は使うことが多いので、アマゾンで買えば日本の何処でも送料無料で配送してもらえます。関東以外の地域だと、3日ほど配送に時間がかかりますが、概ね予定されている配達日には届けて貰えるのでそれほどストレスにはなりません。1つ欠点があるとしたら、配達日時を指定できないことで、夕方・夜に配達して貰いたいときに早朝に着ていて受け取れないことがあったりするということでしょうか。

アマゾンの光の部分が長くなりましたが、アマゾンの“影の部分”というのは、簡単に言ってしまえば現在社会問題となっている『正社員とアルバイト・パートの待遇格差・給与格差の問題』です。派遣社員やアルバイトを使い捨ての労働力として利用することで生まれる『社会格差(生涯賃金格差や将来の生活保障の欠如)』を、アマゾン型の効率性(利益率向上とコスト削減)を最優先する新興企業が深刻化させる可能性があるということですね。アマゾンの光は、アマゾンの商品を購入してくれる顧客(消費者)に惜しみなく降り注ぐわけですが、長年の赤字経営を抜け出し巨額の利益を上げようとしているアマゾンの収益は、末端のアルバイト従業員には余り多くは分配されないということです。

『アマゾンの光と影』の筆者・横田増生さんは、アマゾンのアルバイトとして採用され労働現場の実態を潜入ルポするわけですが、時給900円で昇給や出世の望みが殆どない中で、将来のキャリアやスキルの向上と全く関係しない機械的な単純作業に黙々と従事し続けながら、現場のバイトの人たちと交流していきます。アルバイトの人たちは、会社の理不尽な経営方針(無理なノルマ・二ヶ月に一回のこまめな契約更新・突然の賃金引き下げ)や正社員の人たちの横暴な振る舞いに文句や愚痴を言うでもなく、その日の日給を得る為に機械的に働き、限界を感じれば物言わず静かにその現場を去っていきます。軽作業のバイト現場には、『将来の希望や出世の可能性』が全くなく『職場への愛着や従業員同士の連帯感』というものも殆どないわけですが、最低限の日給を稼ぐには便利な場所でもあるのです。

ただ問題なのは、そこでバイトをしているのが10代の学生などではなく、大部分が30代以上の人たちで中には家族をそのバイトで養っている人もいるということです。毎日の経済ニュースでは、大幅な景気回復や企業の史上最高益の話題、売れ筋の新商品の発表、IPOによる株での大もうけなどが報じられますが、その一方で、年収にして200万に届くか届かないかというようなアルバイトやパートで家族を支えている人たちもいるという厳しい現実があります。

ただその日を生きる為の日銭を稼ぐ為だけの労働というのも若いうちであればそれほど苦ではないかもしれませんが、一定以上の年齢になり人生の先が見えてくると、自分のアイデンティティが仕事と結びつかない苦悩や諦めというものにつながってくるのかもしれません。

しかし、消費者が享受する魅惑的な商品や物流(配送)の利便性、各種のサービスを利用する快適性は、その多くが、単純作業に従事するアルバイトやパートの人たちによって支えられているのであり、現代社会全体に、『消費者に当たる光』『労働者を覆う影』の二極化の問題が拡散していると見ることも出来ます。

大学や高校の新卒時に自分が希望する企業や職種に就職できなかった場合、最終的には、仕事を自己実現と切り離して『生きる為の手段』と割り切り、その仕事で得た給与で家庭生活やレジャー・趣味、友人・恋人との交遊を楽しんでいくか、何とかしてキャリアアップやスキルの修得をして正規雇用の労働市場に切り込んでいくかしかないのかもしれません。

しかし、一部上場企業と通常の中小企業でも生涯賃金格差は1億円以上ありますから、アルバイトの場合には老後を支える年金の不足分をどこから補填するのかが問題になりますね。会社員にある厚生年金や公務員にある共済年金を自営業やアルバイトは貰えませんから、その分を貯蓄・投資するか民間の老齢年金に加入するかしないといけませんが、元々の手取りが10万前後から20万と少ないので国民年金の保険料さえ満額で払えるか微妙なところがあると思います。

社会格差というか経済格差の問題は、結局のところ、社会保障のない非正規雇用者が高齢者になってアルバイトさえできなくなった時にどういった社会保障を得ることができるのかという問題に行き着きますし、老人の孤独死や自殺、餓死といった暗いニュースとの相関性も気になるところです。結局、社会保障制度の再生と現代の雇用環境の流動性の確保がポイントなのでしょうが、終身雇用制の前提がなくなっても安心して老後を迎えられる社会を国民が意識して再構築していかなければならないと思います。

『アマゾン・ドット・コムの光と影』は、アマゾンを頻繁に利用する人もそうでない人も、現代社会に厳然と存在する『労働の待遇格差』や『仕事のアイデンティティの消滅』について考えるきっかけを与えてくれる書籍だと思います。

関連記事

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

コメントの投稿

非公開コメント

スポンサード リンク


最近の記事
カウンター

カテゴリー
Amazon Associates

月別アーカイブ
プロフィール

東雲 遊貴

Author:東雲 遊貴
現実とウェブに溢れる膨大な情報の海から、『重要で役に立つニュース』を紹介したり、『面白くて便利な情報』を記録したりしていきます。

e-mail:noble.desire@gmail.com

最近のコメント
最近のトラックバック
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。