日本製紙など大手製紙会社の「再生紙偽装(環境偽装)」とグリーン購入法の問題点!
日本製紙など大手製紙会社の「再生紙偽装(環境偽装)」とグリーン購入法の問題点!
日本製紙など大手製紙会社が古紙配合比率を偽装していた問題が、TBSの「ニュース23」の報道で明るみに出ました。この再生紙偽装の問題が発覚するきっかけは、同社の内情に通じた人間からの「内部告発メール」であり、一昨年から続く食品偽装・建築偽装の問題と同じく「内部告発による企業リスク」が高まりを見せています。非正規雇用が増えたことや労働道徳の変化によって、かつてのように社員が企業に絶対の忠誠を誓うという専制的なコーポレートガバナンスが通用しなくなっており、「社会的信頼を裏切る不正(違法行為)」があれば企業側を擁護しないという従業員が増えたのかもしれません。企業の経営陣やその他の従業員にとっては、自分達の生活基盤(給与)や社会的信用が関わっているので、基本的には「内部告発」は歓迎されないものだと思いますが、一生その企業で働くつもりがない従業員(あまり良い待遇をされていない従業員)や道徳意識が強くて不正を許せない真面目な従業員の場合には、不正や違反を大目に見る「身内の論理(勤めている企業優先の考え方)」が通用しないこともあるのではないかと思います。
日本製紙の大規模な再生紙偽装は、年賀はがきの古紙配合比率をごまかしたという問題から「すべての再生紙はがき」の配合比率が低かったという問題に発展しました。中村雅和社長は「環境偽装と言われてもしかたのないような事態を招いたと考えています」と謝罪して辞意を表明しましたが、この問題は利益至上主義(市場主義)の弊害というよりも「古紙再生技術の限界」という要因が大きいようです。つまり、現在、日本の製紙業界が持っている技術では、古紙配合比率40%以上で、通常のはがきとほとんど変わらないような品質を維持することができず、文字を書きにくいはがきになってしまうということですね。少し前の時代であれば、品質がよければ多少配合比率を水増ししたっていいじゃないかという意見も多かったと思いますが、ここ数年で自然環境保護への国民の意識が高まりを見せており、「企業の利益主義への批判」とは別のベクトルで「資源浪費・環境破壊への批判」が強まっているという事情があります。
元々、製紙業界の答申では「葉書用紙が再生紙化された平成4(1992)年当時、工場内発生損紙も古紙として認識し、古紙パルプ6%と合わせた30%でテスト生産した結果、近い将来の技術革新で配合率40%の実現が可能と営業判断し受注を開始しました」とあり、「未来の技術革新があれば」古紙配合率40%が可能と考えていたようです。つまり、現在の製紙技術水準では、古紙配合率40%ははじめから達成できなかったわけで、「監督官庁からの要請=リサイクル関連の拙速な法整備」と「環境保護による補助金・付加価値の利益」によって製紙業界が無理な発注を偽装して受けてしまったということですね。日本製紙以外にも、王子製紙、三菱製紙、北越製紙、大王製紙の再生紙偽装が確認されており、どの製紙会社にも現在のグリーン購入法が求める40%の古紙配合をして品質を維持する技術はないようです。
グリーン購入法というのは、リサイクル促進のために2001年に制定された法律で、国や独立行政法人に環境に配慮した製品の購入を義務付けたものですが、これによって製紙会社はリサイクル費用(再生産コスト)に該当する補助金を得ることになりました。現在は文具や電気製品、車など17分野の222品目がグリーン購入法の対象となっていて、紙製品の法規定ではコピー用紙が古紙配合率100%、印刷用紙やノートは70%などと基準が決められているものの、実際の配合比率を検証するような仕組みは用意されていません。問題の本質は、実際に高度なリサイクルをする技術が十分に確立されていないのに、グリーン購入法の古紙配合率で発注を請け負っていたことであり、「現在の技術と法的規定のバランス」をもう一度厳密に見直す必要があるのではないかと思います。更に、リサイクルや再生産のコストと環境に与える実際の影響を数量的に検証して、「本当に環境に優しいリサイクル」を段階的に推進していくことが望ましいでしょうね。
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