簿記の基礎知識8:資産編・普通預金と当座預金
簿記では、複雑な仕訳が度々起こりますが、その場合には、まず『分かりやすい現金の流れ』を見極めて、『資産の増加』となる「現金」であれば借方(左側)に書き込み、『負債の増加』となる「借入金・買掛金」などであれば貸方(右側)に書きこむようにします。
借入金がある場合には、大抵、利子を支払うことになりますが、勘定科目の『支払利息』は費用の発生になりますから、借方(左側)に書き込むようにしてください。借方に資産である「現金」と費用である「支払利息」を書き、貸方に負債である「借入金」を書いて、両者の金額が一致すれば良いわけです。
商品を仕入れた場合には、「仕入」の勘定科目は「費用」なので「借方」に書き、支払ったお金(資産の減少)を「現金」の勘定科目として「貸方」に書きます。買い掛けの信用取引にしたお金は「負債」なので「買掛金」として、「貸方」に書いておきましょう。すると、借方に「仕入」、貸方に「現金・買掛金」となり、その合計金額が左右一致すれば間違いはないということになります。
■取引の8要素……資産の増加・資産の減少
ここで、『取引の8要素』に戻って、『資産の増加・資産の減少』が起こる取引について考えてみます。
資産の増加のときには「借方」に勘定科目と金額を書き込み、資産の減少のときには「貸方」に勘定科目と金額を書き込みます。資産とは、前回書いたように、財産価値のある『財貨と債権』のことです。
財貨……現金・普通預金・当座預金・有価証券・備品・土地・建物・車両運搬具など
債権……受取手形・売掛金・貸付金
財貨の資産に含まれる「現金」はもっとも僕達に馴染みの深い資産ですが、簿記で「現金」という場合には、貨幣(硬貨・紙幣)だけを指すわけではありません。貨幣以外にも、他人が振り出した現金化可能な「小切手」「郵便為替証書」「配当金領収書」「公社債の利札」など金融機関でお金に換えられるもの全てを「現金」に含みます。
こういった金融機関で現金化可能なものを、『通貨代用証券』と呼びます。通貨代用証券は、勘定科目は「現金」で取り扱うこととなります。
資産の代表的なものに、誰もが持っている「普通預金」があります。企業であれば小切手を使ってお金を引き出す「当座預金」というものが代表的な資産になります。当座預金は、お金の出し入れが自由な預金ですが、普通預金のように通帳は発行されず小切手でお金を引き出します。
当座預金では通帳がありませんので、「取引の明細」が銀行から郵送されてきますのでその明細書を見て残高や取引を確認することになります。ちなみに、当座預金は決済用途の預金ですので、普通預金のような利息はつかず、企業の財務が悪化すれば「不渡り」を出す恐れがあります。不渡りは、取引先に渡した手形や小切手が現金化できないということですから、その企業が事実上倒産の危機にあることを意味します。
「買掛金」を、小切手で支払った場合「当座預金」の残高が減りますので、借方に「買掛金」を書いて、貸方に「当座預金」と書きます。小切手を受け取った場合の勘定科目は「現金」ですが、小切手で支払った場合には「当座預金」の科目になりますので注意が必要です。
- 関連記事
-
- 簿記の基礎知識9:債権(売掛金・受取手形・有価証券・有形固定資産)
- 簿記の基礎知識8:資産編・普通預金と当座預金
- 簿記の基礎知識7:仕訳帳のルールと仕訳の13パターン