簿記の基礎知識11:資本の仕訳(資本金・資本準備金・未処分利益など)
前回までの記事で、資産(財貨・債権)と負債の仕訳についての概略を見てきましたが、今回は『資本の仕訳』について簡単にまとめておきます。資本の仕訳は、個人事業者と株式会社で異なり、個人企業の場合には「資本金」で全て処理できますが、株式会社の場合にはやや勘定科目が多くなり複雑になります。
個人事業者は、自分の事業と借入金(借金)に対して無限責任を負いますので、元入れと利益の違いを明確化する必要はありません。しかし、株式会社の経営者は、経営者といえども有限責任しか負いませんから、債権者を保護するために利益の使途を明確化する必要があるのです。
資本に関する勘定科目には、『資本金・資本準備金・利益準備金・任意積立金・未処分利益』などがあります。簿記では、借方に「資本の減少」を書き、貸方に「資本の増加」を書きます。
資本の元入れ金には、払い込みと出資がありますが通常区別せずに「資本金」の勘定でくくります。株式会社に特有の「資本準備金」というのは、株主が出資した資金のうちで、資本金に含まれていないものを指します。しかし、資本準備金は何にでも自由に使えるお金ではなく、使い道が制限されている資本であり、赤字補填か資本金の組み入れかどちらかにしか使えないお金です。
資本金に組み入れない株主などの出資者から集めたお金が「資本準備金」なわけですが、簿記では借方に「当座預金」(資産の増加)の勘定科目を書き、貸方に「資本金」(資本の増加)と「資本準備金」(資本の増加)を書きます。
資本金と資本準備金は、出資してくれた株主などに対する「企業の担保財産」ですから、その使い道には厳しい規制がいくつもあり、資本金は基本的に企業の自由裁量で使うことはできません。
個人事業であれば、資本金を自由に使って良いのですが、株式会社の資本金は株主から出資してもらったお金ですから、株主総会での決議を得ないと自由に使えず、「当期純利益の処分」も株主総会で決定します。
株式会社の利益はいったん「未処分利益」という勘定に分類され、株主総会での利益処分が決定してから、『株主配当金・役員賞与金・任意積立金・利益準備金』などの勘定科目に振り分けられることになります。
未処分利益は利益の蓄積ですから、「収益」ではなく「資本」に分類されます。簿記に未処分利益を記載する場合には、借方に「未処分利益」(資本の減少)、貸方に「利益準備金」「繰越利益」「未払配当金」「未払役員賞与」などを書き込みます。資本の仕訳は結構複雑で面倒なので、一つ一つ丁寧に確認しながら、借方・貸方の合計金額が一致するように注意するようにします。
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