若年失業者のアイデンティティと結びついた『希望の仕事内容・職業活動とのミスマッチ』
国民年金や社会保険制度の継続性とも関わってくる問題として『若年者の失業問題』がありますが、失業には大きく分けて自分の希望や都合で仕事をやめる『自発的失業』と雇用者側の経営悪化やリストラによる『非自発的失業』があります。
今、日本では、NEETなどの失業者(自発的に失業状態にある無業者含む)の問題が、マスメディアでクローズアップされていますが、これは日本経済の景気状況が悪いという問題よりも、『自分がやりたい職業や希望の仕事内容』がないという原因が多いようです。
若年失業者の失業理由完全失業率は2003年以降低下傾向にあり、総務省の統計によれば、05年の完全失業率は4.4%で、前年より0.3ポイント低下している。全年齢の失業者の“仕事に就けない理由”をみると、「求人年齢と自分の年齢が合わない」と「希望職種・内容の仕事がない」という答えがその多くを占めている。この2つの理由による失業率の推移をみると、99年から上昇し、02年をピークに低下している。
失業者を年代別に分けてみると、15-34歳で「希望職種・内容の仕事がない」という理由による失業者は、05年には62万人に上っている。同分析は、正規雇用といった雇用形態とのミスマッチというよりも、仕事内容への“こだわり”が要因で、「希望職種・内容の仕事がない」と答えているのではないかとみている。
とはいえ、一定の年齢以上になってしまうと、ある程度のキャリアやスキル、知識がなければ、大手企業や専門職に中途採用されるチャンスは殆どないのが現実です。その為、理想的な仕事や自尊心が満たされる職業を延々と選び続ければ選び続けるほどに、希望の仕事には就けず悪循環を繰り返すことになるのかもしれません。
希望の仕事を選びに選んで失業を続けているという人は、まずは、他人と比較して自分にしかない専門技能や知識を身につけるか、簡単には取得できない業務独占の公的資格を取得するかなどしないと望んでいる就職をすることは難しいでしょう。漫然と採用面接を受け続けるだけで、キャリアもスキルも知識も向上しないのでは、年齢ばかりを重ねて余計に就職には不利になっていきます。
特に、35歳を越えると、もう就職段階でも新人として研修や教育をしてくれる企業はありませんから、即戦力となると相手が信じられる過去のキャリアや特殊な技能がないとまず大手や専門的な仕事には採用されません。俗に言う『仕事内容はいいんだけど、求人年齢をオーバーしちゃってるんだよねえ』という状況に陥ってしまいます。
40代になって職歴がないと、余ほど特別な技能や経験がない限り、単純業務以外の仕事に従事することは困難になるでしょう。反対に、特別に優れた技術や能力がなくても、一定の職歴があれば何処かに再就職できる可能性が高くなるので、最高の条件が整った企業でなくてもとりあえず就職してみることには将来のリスクを引き下げるという意義があります。
NEETに限らず長期失業状況にある人で、自分一人でビジネスをする覚悟や意欲がない人は、最終的には就職するしかないのですから、早い段階で何か目標を決めて知識・情報を集め、その仕事に必要な技術やノウハウを積み重ねたほうが賢明ですね。
確かに、どんな仕事でも生計を維持する収入さえあればいいというのであれば、単純労働だけでなく営業や事務、販売などの求人は数多く出ていると思うので、長期間、仕事がないと言っている人の大半は、仕事を選別しているために就職できないのでしょう。
初めから『希望の仕事以外は、絶対にするつもりがない』という独善的な思い込みをせずに、少しでも興味を惹かれる仕事があればまずはその仕事に応募してみてどんなものか経験してみる思い切りが必要なのかもしれません。始めてみる前には何の魅力もないように思えた仕事でも、実際に中に入って仕事をしてみると、それなりにその職場から学習できる内容があり、キャリア向上に役立てられる経験もあるものですしね。
かつては、『仕事に貴賎はないから仕事を選んではいけない』というような道徳めいた言説がありましたが、今は、少子化と高学歴化の影響で、自分の自尊心や有能感を満足させてくれるような仕事しかする価値がないと思ってしまう幼児的な全能感の強い人が増えたのかもしれません。
周囲から評価されない仕事や他人から注目されない職業に就いても働く意欲が続かないといった若者もいるようですが、バブルの時代に、3Kの職場が敬遠されていたのと類似した現象が広範囲に見られるようになったような気もします。
『社会的分業としての職業・生活を維持する為の仕事』というものを原点から見直す必要を感じます。職業選択の自由は最大限尊重されるべきですが、本人が年齢を重ねてから経済的に困窮しない適切な判断をしていくことが大切だと思います。
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